「助けてぇ・・・もうやだ・・・帰りたくない」
朝の通勤電車で、なにか尋常ならざる空気が流れる。
助けてと言われて出来れば助けてやりたいが、もちろん私に向けら
れた言葉ではなく、見回すと向こうのほうで30代後半と思しき女性が
気だるそうに携帯電話を握っていた。
「ああもうたえられない、環境を変えたい・・・」
付近の乗客は一様に無関心を装っているが、間違いなく聴いている。
それは致し方ないが、この女、ずっと目を瞑って何かを思い出すように
話を続けている。話す内容が差し迫った状況から どうでもいいような
くだらない世間話への移行をみるにあたり、そのだらしない喋り方と
耳障りな声質、そもそも朝っぱらからおそらくは痴情絡みの話をきか
されてどうにも腹が立ってきたが、すぐに私の下車駅がやってきたの
でそこで解放と相成った。
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ある旧い小説を読んでいて、公衆電話を掛けたが後ろに人が並んだので
話を早く切りあげる場面が出てきた。
そういえば以前は公衆電話に行列が出来ていた。
話の早そうな人を見かけで判断しその後ろに並ぶ、というのは日常行動
であった。複数の列があればビジネスマン風の男性の後ろにつくのが
まず定石であって、止むを得ずオバチャンの後に並んでしまうと電話で
相談ごとを始めたりして長引くもんだから、計算の狂うこともある。
話が長くなりそうな人が、直後の人に順番を譲る場面もしばしばあった。
だから後ろの客層を見ながら、自分の電話の内容を組み立てなおして、
迷惑の掛からぬよう時間調整をはかっていた。これは無意識のうちに
皆がやっていたはずである。
また "待ち合わせ" も結構シビアな段取りが要求されるイベントだった。
たかが待ち合わせも 日時・場所・緊急時の対処方法 などあらゆる事態
を想定してとり決めておかないと後々面倒くさいことになることを皆知って
いるから、段取る側も段取られる側もそれなりの 「覚悟」 を持っていた。
今はどうかといえば、ケータイの世の中、かなりアバウトになっている。
自分も含めて。
待ち合わせも、時間間際になって「ゴメン、遅れる」だの「行けねー」だの、
ふざけた電話を掛けてきやがる。どうやらそれが当たり前になったようだ。
気を遣わなくなったのか、待つほうも待たせるほうもそれなりにアバウト
な感覚でいる。 ケータイがあるからいいやと、約束が軽くなる。
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ケータイの普及とともに、日本の治安が目に見えて悪くなってきたように思
えて仕方がない。
いつの時代もマナーを守れない守らない人間はいるけれども、それを超えた
部分で、人と人との関係性を決定づけ、広く人間関係を作り上げる大前提と
してかつては確かにあったお互いの信頼感が、随分と薄らいでしまったように
感じる。 約束事を放棄することのためらいのなさ加減にもそれは垣間見える。
ケータイとの因果の有無はわからないが、実感として 「公共の場」 というの
が喪失し、いつでもどこでも自分の部屋の延長、自分の友達関係の延長、
他人のものは自分のもの的な空気が確実に蔓延している。
よく報道されるスプレーの落書きもそうだ。
昔子どもたちがアスファルトに描いていた落書きではない、れっきとした大人
の仕業、それも手の込んだ「作品」のことだが、声を大にして言いたいのだが、
こいつらは片っ端から検挙して徹底的に懲らしめなければならない。
私の通勤途上にある公共物の壁面に、やはりヒドイ落書きがあって、全く意味
不明なものなのだが、最近どなたかがその上から周囲と同色の塗料で塗り隠
したらしく、それでもその痕跡は隠し切れずにいる。そして切なさが増幅される。
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バカは死ななきゃなおらない、ともいう。
判っていて実行する輩は、じっさいのところ死刑で構わないとさえ思っている
のだが、そうもいかないわけで、まあどっちにしろ 「しつけ」 は必要だろう。
石原都知事が、「若いうちに徹底的に怖い思いをさせ」る必要性を説いていた
けれども、私はこのヒト好きじゃないが、これには賛成するものである。
例えば暴走族などには免許剥奪、選挙違反には選挙権停止、強姦魔には去勢
を施すなど、権利の行使に相応しくない者に対しては、義務履行の状況を判断
し、権利を相応に制限する仕組みが必要な時代がもう来ているのではないか。
入れ墨のチンピラお断りの銭湯などはその先頭を走っているといえなくもない。
好ましいな、入浴権の剥奪(笑
じっさい危険運転致死傷罪の創設・道交法改正の成果だろう、轢き逃げ・飲酒
運転が減っているのをみれば、権利剥奪をいかにおそれているかがわかろうと
いうもの。
ジャンジャンやって欲しいが、あくまでこれらは自業自得であり、我々自身が
そのように自らを追い込んでいることを自覚しなければ、いくらえげつなく牽制
したところで、住みにくい世の中への加速は止められないだろう。
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話が大きくなりすぎたかもしれぬが、要するに私を裁判員にしたらタイヘンな
ことになるからそれだけは絶対に止めたほうがよい、ということなのである。
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